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東京地方裁判所 昭和45年(ワ)8498号 判決

原告 松木商工株式会社

右代表者代表取締役 松木良夫

右訴訟代理人弁護士 高野三次郎

被告 東阪商事株式会社

右代表者代表取締役 徳永康秀

右訴訟代理人弁護士 田中巌

主文

被告は原告に対し、金一〇六万三、九三〇円也及びこれに対する昭和四四年六月一日より完済に至るまで年六分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告の負担とする。

この判決は仮りに執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一、原告

主文と同旨

二、被告

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一、請求原因

1  原告は履物類の製造販売を業とする会社であり、被告は履物類の小売を業とする会社である。

2  訴外弘丸屋商事株式会社(以下弘丸屋という)は、被告に対し昭和四三年六月一日より同年一一月三〇日までに、草履、草履セット、ヘップサンダル等を売渡し、その売掛金債権が同年一二月五日現在一〇六万三、九三〇円あった。

3  原告は弘丸屋に対し昭和四三年一一月一三日頃までの間に売渡した草履、ヘップサンダル等の売掛金債権金一〇六万三九三〇円があった。

そこで原告は、弘丸屋の被告に対する前記の債権金一〇六万三、九三〇円につき、仮差押の決定を得、右決定は昭和四三年一二月六日第三債務者である被告に送達された。

4  原告は弘丸屋に対する右仮差押の被保全権利たる売掛代金請求訴訟(東京地方裁判所昭和四四年(ワ)第二七一号)において勝訴し、この判決は昭和四四年四月一二日に確定した。

5  原告は右判決に基き、大阪地方裁判所昭和四四年(ル)第一四五号、同年(ヲ)第一五九号により前記仮差押債権につき、債権差押並に取立命令を得、右命令は同年五月二八日被告に送達された。そこで原告は被告に同年五月三〇日頃右差押にかかる債権の支払を請求した。

6  よって原告は被告に対し、右金一〇六万三、九三〇円とこれに対する遅滞後の昭和四四年六月一日から完済に至るまで年六分の商事法所定の遅滞損害金の支払を求める。

二、答弁

1  請求原因第1、第2項は認める。

2  同第3項中仮差押決定の送達を認め、その他不知。

3  同第4、第5項は認め、第6項は争う。

三、抗弁

1  被告は弘丸屋に昭和四三年一二月一一日本件仮差押にかかる債務を弁済した。

2  前記仮差押は、原告の申立により、昭和四四年七月二八日執行取消がなされたが、右執行取消には遡及効があるから、被告の弘丸屋に対する弁済は有効となった。

四、抗弁に対する認否

抗弁中第1、2項の事実を認める(但し執行取消の効果についての被告の主張は争う)。

理由

原告主張の請求原因事実(但し同第3項前段の事実を除く)および被告主張の抗弁事実は当事者間に争いがない。

ところで、原告は債権仮差押決定に基きこれが本執行を申立て、債権差押並びに取立命令を得た後に右仮差押申請を取下げ、該仮差押決定が取消されたのであるが、このような場合仮差押の効力にどのような影響があるかを検討するに(このように本執行に移行した後に仮差押の取下、取消の余地があるかは別として)、仮差押は本執行への移行によってその目的を果し、仮差押による処分禁止の効果は、本執行への移行の時点より将来に向って本執行が取下等によって終了しないことを解除条件として、本執行の処分禁止の効果に転換してこれに吸収され、本執行移行後に仮差押の執行取消処分がなされたとしても、仮差押の効果は本執行が遂行されるに必要な限度で存続すると解するのが相当であるから、第三債務者である被告が債務者に対してなした既往の弁済はこれを以って仮差押債権者である原告に対抗できないというべきである。

そうだとすると被告主張の抗弁は理由がなく、原告の本訴請求はすべて正当であるからこれを認容することとし、民事訴訟法第八九条第一九六条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 定塚孝司)

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